「障がいを持つ子供に“遊び”の場を提供したい」日本車いすスポーツ協会を設立した坂口剛氏の思い(後編)

Spportunityコラム編集部

(出典:Sports Japan GATHER 2017年5月2日)
日本車いすスポーツ協会代表の坂口剛氏


一般社団法人日本車いすスポーツ協会」の代表・坂口剛氏。生まれも育ちも福岡県である彼は今、縁もゆかりもなかった千葉県浦安市で、車いすスポーツの推進活動を行っている。きっかけは、長男・竜太郎くんが交通事故に遇い、車いす生活となったことにあった。果たして、坂口氏はなぜ、福岡から遠い浦安へと行くこととなったのか。そして、なぜ自らの手で活動を始めようと思ったのか。そこには、知られざる日本の「事情」があった。前編はこちらから。 

取材・文/斎藤寿子
 

「KURUSPO」設立に込められた思い



現在、活動に参加している子どもたちは12人。下は1年生から、上は中学2年生と幅広く、車いすに乗っている子もいれば、乗っていない子もいる。テニスを始めたばかりの子を除き、練習は基本的に“みんなで一緒に”やっている。

実は、坂口氏がクラブを設立した狙いはここにもある。障がいの有無に関係なくスポーツを楽しむ場が、「障がいがあるから、ないから」という「壁」を失くすことにもつながると考えているからだ。

2017年2月には「サークル」から「一般社団法人日本車いすスポーツ協会」を立ち上げた。愛称は「クルスポ」(KURUSPO)。設立の理由は、やはり「子どもたちにスポーツを楽しむ機会をあげたい」ということにある。

「障がいのある子どもたちが、スポーツをやりたいと思っても、できる場所は限られています。個人的に施設に問い合わせても“理由なき理由”で断られるケースがほとんど。そうすると、親の方がくじけてしまうんです。僕も何度も断られた経験があるので、わかるんです。でも、それでは子どもたちがスポーツをする機会に恵まれません。だったらと自分でサークルを作ったのですが、もっとそれを広げて継続させたいと思って一般社団法人を設立しました。子どもたちがいざ何かをやりたいと思った時に、その機会を与えられる道を作りたいと思ったんです」

「KURUSPO」では、車いすテニスや車いすスキーなどの「スポーツ活動」、車いすを使って鬼ごっこや登山、ダイビングなどを楽しむ「遊び、野外活動」、障がいについての理解を広げるための「講演会、体験会」といった3つの柱を中心に活動していく。もちろん、障がいの有無に関係なく、誰でも参加することができる。

同協会では、<すべての子どもたちに豊かな未来を>という理念に賛同するサポーターも募集している。すでにいくつかの企業からも支援の声があがっているという。

坂口氏の長男・竜太郎くん。2016年日本ジュニアランキングでトップとなった


実はこれまでは、コート代(照明代含む)、ボール代など全経費を坂口氏が出してきた時代があった。今では2人のコーチが持ち回りで指導してくれており「助けてもらうのが当たり前」という考えを嫌う坂口氏は、僅かながらでも謝礼を支払っている。

2年前からは人数が増えたこともあり、会費を募るようにはしたものの、年間で約200万円かかる運営費をまかなうことは決して簡単なことではなかった。これでは活動に限界があり、いずれは継続することができなくなる。だからこそ、法人化を決意。その根底には、このような思いがある。

「子どもたちは、自分に障がいがあるなんて思っていないんですよ。それよりも『やりたい』『知りたい』という思いの方が強いんです。車いすに乗っている子にだって『僕は将来サッカー選手になるんだ』と言っている子もいる。そう思えること自体が、僕は素晴らしいことだと思うんです。それを周りが『そんなの無理だよ』なんて抑えつける必要は全くないわけです。もともと無茶で大きな夢や憧れを持つのが子どもなんですからね」

そんな坂口氏の下で育ち、今年4月には中学2年生になった長男・竜太郎くんは、2016年日本ジュニアランキングでトップとなった。しかし坂口氏は、こう語る。

「もちろん、竜太郎が努力したこともあったと思いますが、幸運にも恵まれた結果だと思っています。大事なのは、竜太郎がジュニアチャンピオンになったことではなく、それよりも彼のことを知って、障がいのある子どもたちが『自分もやってみたい』と感じてくれること。竜太郎の障がいの程度は、車いすテニスプレーヤーの中で最も重い(クアードを除く)。それでもジュニアでトップに立つことができた。『ならば、頑張ればあそこまでなれるのかな』と、どんどんチャレンジしていってほしいんです」

日本財団パラリンピック研究会が2014年に行ったインターネット調査によると、「パラリンピックを知っている」日本人は、98パーセントにのぼるという。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した2013年以降、パラリンピックの報道が増加の一途を辿っている今、耳にする機会が増えたことが要因となっているのだろう。課題は山積しているとはいえ、パラリンピックを目指す選手たちの環境も、様変わりしたといっても過言ではない。

しかしその一方、競技以外の部分ではどうだろうか。障がい者や障がい者スポーツへの認知、理解はまだまだ深まってはいないのが現状。そんな中、障がいの有無に関係なく、車いすスポーツを「遊び」として気軽に楽しむことができる場を提供する「KURUSPO」が担う役割は大きいはずだ。

-みんなを、わくわくの国へと連れて行ってくれる「車いすプロジェクト」-今後に注目したい。

※データは2017年5月2日時点

記事提供:アスリートのための、応援メディア Sport Japan GATHER
https://sjgather.com/

(記事元:https://sjgather.com/magazine/201705021700/