箱根駅伝で優勝に導いた名指導者 ~鈴鹿大学 女子駅伝チーム~ 後編

Spportunityコラム編集部

前編(*1)では「箱根駅伝優勝」という指導者実績もある小野 圭久氏のキャリアを紹介した。栄光の陰には、数々の悔しさや苦難の連続だった。

「陸上はもう辞めよう」
 
小野氏は指導者を引退するつもりだった。自分のキャリアや経験を振り返り学生らに伝えるべく、母校の順天堂大学の大学院修士課程を修了して教員の道を目指した。そして、鈴鹿大学の教員となった。

 鈴鹿大学から女子駅伝チーム監督のオファーを受けて、悩みながらも再び監督として立ち上がったのだ。

 再び立ち上がった原動力とは何なのか?駅伝を通して何を学生たちに伝えたいことは?そんな想いを後編で展開していく。

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前編のURLはこちら
http://www.spportunity.com/column/127/column_detail/
 

女子駅伝チームの立上げを決意した原動力とは?


練習中に選手に声を掛ける小野監督

 

――今回、鈴鹿大学で女子駅伝チーム立上げはどのタイミングでしたか。――

小野監督
 鈴鹿大学の教員として採用が決まってからです。しかし、陸上関係者には
「女子駅伝チーム立上げありきで就任したのではないか?」
と懐疑的に思われていました。

 しかし実際は、スポーツマネジメントの教員として採用された後に立上げの指示がありました。

 私にとって女子選手の指導は初めてでした。そのため、先日お亡くなりになりました小出義男さんが立ち上げられた佐倉アスリート倶楽部や、女子選手を指導されている高校の先生のところに足を運び、イチから指導法を勉強しました。

――指導法の勉強以外に立上げの際にどのようなことを行ってこられたのですか?――

小野監督
 まずは選手が全くいないためスカウト活動を行いました。今まで数多くの関係者の伝手を頼り、全国の高校に訪問しました。そして次に「活動資金集め」や「練習場所の確保」、さらに「選手の下宿先の確保」とあらゆる交渉を行ってきました。

――もともと鈴鹿大学で駅伝の指導など考えていたのですか?――

小野監督
 やろうとは思っていませんでした。

――断ることもできたと思われますが、「もう一度駅伝部をやろう!!」と思われた原動力は何ですか?――

小野監督
 いくつかあります。
 1つは(順天堂大学大学院の)恩師である水野先生から

「部活はやった方がいい」

という言葉です。自分もやってきたことであり、アイデンティティーのためにも、部活はやった方がいい!!という後押しをしてくれました。
 もう1つは地元 (三重県) の陸上関係者から

「おかえり!!」

という言葉を頂いたことですね。

――それはどういう事でしょうか?――

小野監督
 (言葉をいただき) うれしかったですね。地元の陸上関係者に、鈴鹿大学で女子駅伝チームの話を受けていることを相談しました。女子駅伝チームが立ち上がることにすごく喜んでくれた姿を見て

「地元のためにも頑張ろう!!」

と思い立ち上がりました。
 

選手の育成も『襷』で繋がっている


――(鈴鹿大学 女子駅伝チームの3選手を含めた高校生までの駅伝の育成の話になり)――

小野監督
 駅伝を指導する高校の先生方はプライベートを犠牲にして、選手を手塩にかけて育てていただいています。選手を預かることは、今まで大切に育てられた競技能力を伸ばすだけではありません。(指導者の) 想いも含めて、

「襷を引き継ぐこと」

だと思っています。選手達を4年間、一生懸命指導して社会に送り出すことで、受け取った襷を次のステップに繋げていきたいです。

――選手としてだけでなく、社会で活躍できる人を育てたいことでしょうか?――

小野監督
 はい。(駅伝選手としてだけでなく) 鈴鹿大学で教育を行い高校の先生から引き継いだ襷に、しっかりと応えなければならないと思います。ただ、同時にプレッシャーもあります。

――プレッシャーに応えるべく指導、クラブ運営も重要となりますね――

小野監督
 チーム運営のためには、一定数の部員が必要であるため、スカウト活動を行います。しかし、残念なことに高校時代に優秀な能力を持っていたとしても、家庭環境や経済状況が苦しく、大学に行きたくても行けない選手もいます。
 そのような大学に行けない選手の夢を叶えてあげたい!!と思う一方で、大学の援助や奨学金を含めても限界があります。それでも現在は、少ない予算の中でチームの運営と選手の生活面のサポートもしています。

――「駅伝を続けたい」と思う生徒に希望を与えるためにも生活のサポートが必要ということでしょうか。――

小野監督
 はい。駅伝は、日々の体調管理や食事は非常に重要になります。まずは、しっかりとした生活リズムを作らないといけません。なので、授業後のアルバイトなどを夜遅くまで行い、生活資金を稼ぎながら競技を続けることが非常に難しいスポーツです。そのためには、生活も含めた資金がどうしても必要となります。
 (生活だけでなく)力をつけるためには、どうしても夏合宿で走りこむことをしなければ結果が出ません。夏合宿を行うために、合宿費が必要となります。いかに合宿費を安くできないかを模索していますが、正直、非常に難しいです。
 そこで、今回クラウドファンディングによる活動資金をご支援をいただきたいと思い行動しました。そこで出会ったのがスポチュニティ (*2) でした。

*2
スポチュニティとは
http://www.spportunity.com/about_us/

 

女子駅伝チームを通して学んでほしいこと


練習終了時のミーティングの様子

 

――今は運営が苦しいですが、どんなチーム作りをしていきたいでしょうか。――

小野監督
 選手の獲得も苦しく簡単ではありませんが、私は『人財は組織の宝』と考えています。
 したがって、チームを強くすることで、組織や人財をより活性化していきたいです。まずは直近2~3年は、選手を集めて大会に出場できる体制を整えたいと思います。

――最後に女子駅伝部の目標とどんなチームにしていきたいですか?――

小野監督
 現在の女子駅伝チームは、家庭や周囲の環境に恵まれなかった選手が入ってきます。そのような彼女らにも競技に集中でき、学習に励むことができる環境を整え、思う存分やれるようにしていきたいです。
 また、社会に出る一歩前の最後の学びの場が、この大学です。女子駅伝チームは鈴鹿大学の強化クラブとして結果を求められます。しかし競技の結果だけでなく、社会に貢献できる人財を輩出する役割も同時にあると私は考えています。
 だから彼女らには、競技活動だけでなく、学生生活やボランティア活動などを通して、たくさんの方に「感謝の気持ちを伝える」ことを学んでほしいです。
 

取材を終えて

 このインタビューの前に練習開始から見学させていただいた。小野氏は練習場所の貸出しを提供していただいている高校の先生、あるいは下宿先の喫茶店に、何度も頭を下げ、丁寧に感謝を伝えていた姿が印象的だった。

「感謝の気持ちを伝える」

選手に感謝をする大切さを、自身の行動で伝える。そして同時に、

「感謝の想いを体現しているのは、小野監督自身が喜びやどん底を味わった長い人生で得られた信念みたいなものかもしれない。」

と筆者は感じずにいられなかった。


☆選手へのインタビューは後日配信予定です!!


▼鈴鹿大学 女子駅伝チームが気になるあるいは興味を持たれた方はこちら

http://www.spportunity.com/mie/team/316/detail/